医師が解説!ハウスダストとは? アレルギーを防ぐお掃除のポイント

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HEALTH

アレルギーの原因となる「ハウスダスト」。言葉は知っていても、その中身はいったい何なのかをご存じですか? また、ハウスダストの対策では「お掃除」が大切なことは知っていても、実際、どのようにお掃除をしたら効果的に減らせるのでしょうか。ハウスダストと効果的なお掃除方法について、鼻の病気とアレルギーに詳しい松脇先生に詳しく教えていただきました。

松脇 由典 先生
監修

松脇 由典 先生
松脇クリニック品川 院長

まつわき·よしのり 東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。同大学耳鼻咽喉科学講座講師などを経て、2016年松脇クリニック品川を開院。長年にわたり鼻科を専門とし、好酸球性副鼻腔炎に対する治療や内視鏡手術を得意とする。日本鼻科学会「嗅覚障害診療ガイドライン」の作成メンバーとしても活躍。

4人に1人が、ハウスダストなどによる「通年性アレルギー」に悩んでいる!

日本耳鼻咽喉科学会が2019年に行った「鼻アレルギーの全国疫学調査」によると、ハウスダストなど、年間を通じて屋内の空気中に漂う物質にさらされることで起きる「通年性アレルギー」をもつ人は24.5%。なんと、全国で約4人に1人が悩まされていることが分かりました。

そもそもハウスダストとは?

ハウスダストとは、家の中のチリやホコリの中でも特に1mm以下の目に見えにくいサイズの物のことをいいます。目に見えないくらいに小さくて軽いハウスダストは、部屋の中で舞い上がって空気中を漂っており、人が吸い込んだりしやすいのです。ハウスダストの中には、以下のようにたくさんのアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が混在しています。

ハウスダストに含まれる主なアレルギーの原因物質(アレルゲン)

ダニ、ダニの死骸やフン

様々なアレルゲンが混在しているハウスダストの中でも、最もアレルギーの原因になりやすいのがダニ(主にチリダニ)です。ダニはハウスダストに含まれる人や動物のフケや皮膚片、食べかす等を食べ、繊維くずを産卵や繁殖の場にします。室温が25℃以上、湿度が60%以上の高温多湿になると繁殖しやすくなりますが、アレルギーを引き起こすのは、生きているダニだけではありません。粉々になった死骸やフン、脱皮した皮などもすべてアレルギーの原因になってしまうため、夏に繁殖したダニの死骸などによって秋にアレルギーが起こることも多くあります。

カビ、細菌

カビの胞子は空気中を浮遊します。カビは湿度が70%以上、温度が20℃から30℃で増殖しやすく、夏は特に生えやすい季節です。また、冬も結露などによってカビが発生しやすくなります。

繊維くず

寝具や洋服などから出た繊維くずはハウスダストに多く含まれ、ダニの繁殖場所となります。繊維くずは他のアレルゲンを巻き込みながら、やがて大きな綿ボコリになっていきます。

人間の毛髪、フケ、皮膚片

ダニの食べ物となったり、カビが繁殖するための養分となったりします。

ペットの毛、フケ、皮膚片

近年、動物によるアレルギーも増えていますが、ペットのフケなども人間と同じでダニやカビの養分になります。もちろん、ペットそのものにもダニが付着しています。

食べかす

人の食べかす、調理中に落とした食品や調味料のかすも、ダニやカビを繁殖させるハウスダストの1つです。ちなみに小麦粉やお好み焼き粉など、いわゆる「粉もの」の食品はコナダニという種類のダニの大好物。開封後の粉ものの袋を常温で保存すると、ダニが一気に繁殖し、食べることで重大なアレルギー症状「パンケーキ症候群」を引き起こすことがあります。開封後は必ず冷蔵庫で保存しましょう。

花粉、土や砂ぼこり、排気ガス、タバコの煙など

窓から入ってきたり、人が持ち込んだりする花粉、土や砂ぼこり、排気ガスもハウスダストとして屋内を漂っています。また、タバコの煙は喘息(ぜんそく)などの原因になります。

ハウスダストが引き起こすアレルギー疾患は?

ハウスダストが原因で起こるアレルギーのことを「ハウスダストアレルギー」といいます。アレルギーとは、体を守るための免疫機能が、異物(この場合はハウスダスト)を排除しようとして引き起こす過剰反応のこと。ハウスダストによるアレルギー疾患や悪化させたりする病気には、以下のようなものがあります。

アレルギー性鼻炎

くしゃみ、鼻水、鼻づまりを引き起こします。特にハウスダストによるアレルギー性鼻炎は一年中症状を引き起こすため、「通年性アレルギー鼻炎」と呼ばれています。

アレルギー性結膜炎

目のかゆみ、充血、ゴロゴロとした違和感、涙目、痛みなどが現れます。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はアレルギーが原因で起こるわけではありませんが、アレルギーを起こしやすい体質をもっていたり、皮膚のバリア機能が弱かったりする人に多くみられる疾患です。ハウスダストで皮膚が刺激されることで、アレルギー症状を引き起こし、湿疹やかゆみが出やすくなります。

気管支喘息

気管支喘息の原因は様々ですが、アレルギーの原因物質を吸い込むことで、せきや呼吸困難を引き起こすことがあります。子どもの気管支ぜんそくの場合は、ハウスダストアレルギーが原因のことが多いです。

ハウスダストは家のどこに多いの?

ハウスダストはほとんどが目に見えないため、きれいにお掃除しているつもりでも意外とたまっていることがあります。家の中でハウスダストのたまりやすい場所を知ることは、効果的なハウスダスト対策の第一歩となります。

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寝室

ベッドや布団、枕などから繊維くずが多く発生し、さらに毛髪やフケなども落ちやすい寝室は、最もハウスダストがたまりやすく、ダニが好む場所です。ダニは暗い場所が好きなので、布団や枕の綿の中に潜っていきます。そのため寝室のお掃除と共に、寝具のお掃除をすることも大切になります。

クローゼット、押入れ

寝具や洋服などの繊維くずが多く、湿気のこもりやすいクローゼットや押入れは、ハウスダストがたまりやすく、カビも発生しやすい場所です。

ぬいぐるみ

ぬいぐるみはホコリやダニで想像以上に汚れているため、定期的に高温スチームクリーナーをかけて清潔にしましょう。寝室のベッド周りに増やさないことも大切です。

カーテン

カーテンは結露によってカビが発生しやすく、ダニやホコリなどもつきやすいため、年に数回は洗いましょう。

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カーペットやラグ、畳

カーペットやラグ、畳はダニの温床になります。畳の上にカーペットやラグを敷くのは、最も避けたい組み合わせ。日本アレルギー学会発行の『アレルギー総合ガイドライン2022』では、カーペットよりもフローリングの床が望ましいとされていますが、難しい場合は毎日のお掃除が大切です。

クッション、布製のソファ

クッションや布製のソファはホコリやダニで想像以上に汚れています。また、ベビーカーやチャイルドシートのクッション部分も意外な盲点。定期的に洗ったり、洗えない場合は高温スチームクリーナーと掃除機をかけて清潔にしましょう。

本棚

ハウスダストは紙にも集まりやすいため、本棚も注意したいポイントです。ガラス扉付きの本棚にするとハウスダストを防げて、お掃除もしやすくなります。

照明カバーや家電製品の周り

静電気があると、ホコリがくっつきやすくなります。そのため、家電製品の周りなど静電気がある場所にはハウスダストが引き寄せられ、増えていきます。

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浴室、洗面所

浴室や洗面所は温度も湿度も高く、カビが発生しやすい場所。また、タオルなどの布製品があるため繊維くずも多く、髪の毛や皮膚片など様々なハウスダストがたまりやすい場所です。

ハウスダストを減らすお掃除の5つのポイント

目に見えにくいハウスダストを効果的に減らすには、どのようなお掃除方法がよいのでしょうか。5つのポイントをご紹介します。

①床掃除は、朝一番に

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ハウスダストは小さくて軽いため、人の動きや風で簡単に舞い上がってしまいます。舞い上がったハウスダストは数時間かけ、ふたたび床に落ちてたまります。特に人が寝静まった深夜にハウスダストが床にたまるため、朝一番が床掃除の最大のチャンスです。昼間に留守にすることが多いご家庭の場合は、同じ理由で帰宅直後もおすすめです。

②高い所から、低い所へ。ホコリを吸着させて

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掃除は高い所から低い所へ進めるのが基本ですが、高い所を、はたきでパタパタと払ってしまうと、ハウスダストをまき散らしてしまいます。高い所はホコリを吸着するタイプのモップなどを使って静かになでて吸着させましょう。また、ハウスダストがたまりやすいのは、床や低い場所にある家電製品、家具など。毎日家じゅうをお掃除するのは大変なので、ハウスダストを減らす目的なら、ふだんの掃除は低い所を集中的に行いましょう。

③掃除道具は使う順番が大事

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掃除道具はいろいろありますが、大切なのは「使う順番」です。実は、最初から掃除機をかけてしまうと、掃除機の排気であっという間にハウスダストが舞い上がってしまいます。そのため、掃除機は最後にかけるのが上手な掃除方法です。

フローリングの床は、まず床用の乾拭きモップ等でゆっくり静かに乾拭きします。その後、ダニやカビなどのアレルゲンを除去しましょう。ダニは60℃以上、カビは50℃以上の高温で死滅するため、高温スチームクリーナーをゆっくり動かしながら拭くと、ダニやカビの死滅につながります。

最後に掃除機をかけてダニの死骸などを吸い取りましょう。日本アレルギー学会の総合ガイドラインでは「1平方メートル当たり1回20秒」の時間をかけて掃除機をかけることを推奨しています。意外と長いと思った方も多いのでは?床掃除は「ゆっくり、静かに」が基本です。また、掃除機の中にたまったゴミやホコリはダニやバクテリアの温床。こまめに捨てるようにしましょう。

④床掃除は一定方向にゆっくりと。最初と最後に壁際を一周

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ハウスダストは空気の流れで室内を漂い、やがて壁にぶつかって下に落ちていきます。そのため、壁際は最もハウスダストがたまりやすい場所。まずは乾拭きのモップなどで壁際を一周、ゆっくり静かに拭き、その後、一定方向にS字を描くように動かして床全体を拭きましょう。様々な方向に動かすと、ハウスダストを取り残してしまいます。最後にもう一度壁沿いを一周拭き、掃除中に舞い上がって壁際に移動したハウスダストを取り除きます。その後に行うスチームクリーナーと掃除機も同様です。

⑤毎日洗えない布団や布製ソファは、干したりスチームをかけたりしてから掃除機を

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布団はすぐに洗えないので天日に干しましょう。残念ながら、天日干しだけでダニを死滅させるのは難しいため、天日干しの後、布団専用のノズル等をつけた掃除機をかけて減らします。日本アレルギー学会の総合ガイドラインでは「週1回、1平方メートル当たり1回20秒間、布団に掃除機をかけること」が推奨されています。シーツや布団カバー、枕カバーはこまめに洗いましょう。また、洗うことができない布製のソファは、高熱スチームクリーナーをゆっくりかけた後に、掃除機で同様に吸い取るとよいでしょう。

毎日のお掃除は家族の健康を左右します。効果的なお掃除でハウスダストを減らし、ハウスダストアレルギーを予防·改善し、家族の健康を守りましょう。

もっと、きれいに。もっと、美しく。 -Beautiful clean life-